(コラム) 学校選択について考える
帰国子女と受験
以下は、一時期を海外で過ごし、いずれ日本へ帰国される方々向けのコラムです。
オランダに来る際、学校選択に悩まれる方は多いですが、実は日本帰国時に問題が起こる場合も多いです。 しかも、そろそろ帰国?急に帰国!という時期になって初めてその問題に気がつく人も多いのです。 どうしてそのようなことが起こるかといえば、それは、日本の学校は自由な選択肢があるか?と思いきや、意外とない場合も多いからです。 いつ頃、帰国予定なのか?帰国後はどうしたいのか?…その問いは駐在する前にある程度 考えておいても決して早すぎということはありません。
インターナショナルスクールのメリット
インターナショナルスクールのメリットはなんでしょうか?大抵の人は「英語が身につく」というかもしれません。 自分が英語習得に苦労したから子どもにはそんな思いをさせたくない…、そんな思いで子どもをインターナショナルスクールに入れる方もいることでしょう。 でも、ちょっと待ってください。それは幻想です。インターナショナルスクールに入学すれば英語が自由自在に操れるようになる…のは残念ながら一部の方々だけです。 考えてみてください。日本から英語圏へ留学する人もたくさんいます。彼らは皆英語ができるようになりましたか?そんなことはないはずです。 私の経験から言えば、英語が自由自在に出来るようになる日本人は残念ながらほんの一握りです。インターナショナルスクールも同じです。 私の経験上、日本でさまざまな「帰国子女さん」にお会いしましたが、さすがあっぱれ!すごいな…という方がいる一方、(決して大きな声では言えませんが) これで英語圏の現地校に通っていたの?というレベルの方がいたのも事実です。ですから、メリット=英語が身につく、という風な考え方は場合によっては危険かもしれません。
じゃあ、メリットは何?と言われたら…私は、さまざまな国の方と接するチャンスがある、といいます。日本ではさまざまな国の人と接する機会はあまりありません。 これが…地図上でしか見たことのない国の人と何かを一緒にするというのはやはりすごいことだなあ、と思うのです。 私はアメリカの1年の留学中にアフリカのとある国の王女さんと英語(ESL)のクラスが一緒になりました。これが…我儘でとんでもない神経の持ち主。 友達になる、なんて冗談じゃありません。下手したらしもべにされてしまいます…(苦笑)。さすがアフリカの発展途上国で国を牛耳っているドンの一族たるや… こんな風になるんだ…ある意味漫画よりすごい…と驚きました。
しかし、こういう方々と接するうちにだんだんと自分に自信が出てきて、彼らと対等になる術を身につけたのです。この「対等」は英語力とかそういう次元ではありません…。 この対等力を手に入れたら、今後の人生はどこへ行っても誰とでも対等でいることが可能になるでしょう。日本人は島国でひとつの文化しか持ち得てないので、 この対等力がない方がほとんど…。外国人に対して、英語力もないし、つい緊張しちゃって外国人としゃべるのは苦手だわあ~…とか考えていませんか?ついつい「へへへ…」と 遜ってしまう日本人はゴロゴロいます。 これは確かに英語力の問題もありますが、実は英語ができないことを言い訳にしていることも多いのです。対等に接する術は英語力とは別の問題で、 いろんな人と接して初めて手に入れることができるものなのです。小さい頃から色んな子どもたちとぶつかりあってこの対等力を手に入れることができたとしたら… それは素晴らしいことだと思います。
さて。オランダのインターナショナルスクールは乱立されていることもあり、先生の技量に問題がある学校も多数あります。 何が問題か?というと「日本人の特性」を知らない人が多い、ということです。悲しいことに…言語をほとんど話さないお子さんが発達障害児として 扱われた事例もあります。日本人は言語力は逆立ちしたってヨーロッパ言語の人々にはかないませんが、きちんと先生の言うコトを聞いて決められたとおりに 行動できる子が多いのです。そういう特性を理解してない先生だと、「日本人=どうせ話をしても返事が帰って来ない人々」と同じクラスの隅で固められたり、 伝書鳩でしか話が回って来なかったり…ろくなことにはなりませんので、注意してください。オランダ人の先生は、残業してまで子どもの問題について考慮し、 私も勉強しよう!なんて心意気のある方はあまりいませんので、そういう先生に当たったら学校をさっさと変えるくらいのつもりでいてください。 せっかく慣れたのだから…日本人のお友達もいるから…などと言っていると無駄な年月を失うことになります。
日本人学校のメリット
日本語が通じる!というのは当たり前すぎてメリットになるのかどうかは分かりません。ただ、日本の学校の理数レベルはオランダの学校に比べると非常に高いので、 こういう高いレベルの理数教科を受けられるのは大きいメリットだと思います。塾でも進研ゼミでも「算数はいちど躓くと算数嫌いの子どもになってしまう」などと よく歌い文句にしてますが…日本に帰ってからも算数が得意の子どもにしたい、のであれば日本人学校はいいと思います (ただし台湾など日本の学校以上に数学に力を入れている国も一部あります…オランダはまったくダメですが)。 特に将来は子どもには日本の国公立大学(特に理数系)へ行ってほしい!と考えている方は…地道に理数教科を鍛えて帰国子女枠など狙わないほうがいいです。 難関国公立大学の帰国子女枠はたとえ数学が受験科目に入ってなくても(ここだけの話)合格者ほぼゼロ…のところが多く、帰国子女枠はまったくメリットにはならないという事実を ここでお伝えしておきます。
さて。私の考える日本人学校のメリットはまったく別の視点です。日本人学校は日本の学校と同じ扱いとなり(これは皆さんご存じだと思いますが…)、 ここでの成績・個人評価・在籍などはすべて日本で積み上げられていきます。つまり転校扱いとなるワケです。一方、インターナショナルスクール、外国の学校、 現地校は残念ながら評価が日本の学校で反映されることはありません。つまりこれらの学校でどれだけ頑張ろうと日本に帰れば「無(成績ナシ)」になってしまうのです。 これはある意味怖いことです。もし中2までインターに在籍し新中3で帰国、しかしながら中3の担任の先生とは折り合いが悪く良い評価をしてもらえなかった…と いうことになったらどうなるでしょうか?インターではどんなに頑張っていたとしても中3の1学期の悪い成績しか人生に加点されないのです。 もしかしたら希望通りの高校に入ることが不可能になってしまうかもしれません。
この場合、むしろ…新中3になる時点で海外事情をよく知る日本人学校に入学し、そこから日本の高校を目指すほうがよっぽどよい成績をつけてもらえる可能性が高いのです。 保護者側からはこの視点は見えないので無視されがちですが、実は非常に大事な点です。実際、こういう点を考慮されているご家族は、 時期を合わせて子どもを日本人学校に転校させています。ちなみに高校受験で必要な内申点は中3の1学期までの成績なので、内申点が欲しい人は中3進級時には 転校していることが望ましいです。
あと、日本人学校の美味しい点といえば、ちゃんと帰国子女枠が確保され帰国子女枠で受験ができる、ということではないでしょうか。 これは本当に美味しすぎるメリットだと思います。日本の教育に準じているので普通枠の受験で公立・都立高校も狙えますし、 帰国子女枠を使ってグローバルに力を入れている私立学校等を狙うこともできます(私立中学も帰国子女枠で受験できます)。 インター・現地校だと日本の教育に準じておらずどうしても対策が取りにくいという問題だけでなく、成績ナシ・内申点ナシという問題がどうしても響き、 普通枠の受験はかなり厳しい・ほぼ絶望的になってしまうので、日本帰国後の学校進路先を重んじる方は一定期間の間だけでも日本人学校に通うとメリットがぐっと上がると思います。
帰国子女枠で受験?!
高校受験だけでなく、日本に帰って中学受験を考えていらっしゃる方も多いと思います。確かに…インターで、日本人学校で、、、英語を一生懸命勉強したのにもかかわらず… 中1でまた一から「This is a pen」なんてやってられっか!という気分になるのもごもっとも。って今はこんな英語勉強しないのかな(苦笑)。 しかし、もし貴方が「うちの子は英語がべらべらになったからもうどの学校にも入れる」と思っていたとしたら(←実際にそう言っている方に遭ったことあります…) …それは大きな、大きな間違いです!!
確かに入学を確約すれば「どこかの学校」には入れるかもしれません。でも「どこにでも」なんてあり得ないのです。 今や中学受験といえば、日本の小学生たちは3~4年時から塾に通って勉強するんですよ。 それがたかだか英語がしゃべれるくらいで(といっては失礼ですが…)一切スルーなんて…そんなワケないじゃないですか。 中学で偏差値50以上、高校で偏差値60以上の学校を目指そうと思うのであれば英語がしゃべれることはオマケ程度に考えて、 それ以外の部分で加点できるように努力をしなければいけません。
こちらのリンクを読めば現実の「帰国子女枠」の受験事情はよくお分かりになるのではないかと思います。
「再び過激に。今を斬る。」(enaワシントンDCのコラムより)
このコラムにある「学校側は生活英語ができる生徒を欲しているわけではありません」が全てを物語っています。ちなみに企業もまったく同じで「英語ができる学生を採用するわけじゃない」とは よく企業関係者が言う言葉です。
ただ…私は何がなんでも4年生から準備、ということはないと思っています。私自身も中学受験しましたが(古い話で申し訳ありませんが…)、 あの頃は今以上に受験者も多く、苛酷な状況は今とさほど変わらないと思うので一応参考ですが、、、私は塾募集最終の5年の冬から入学でもなんとか間に合いました。 最後に入ったので最初の頃はまったくついていけませんでしたが、受験の年の冬くらいには猛烈に追い上げました。なので遅いと絶対ムリ、なんてことはないと信じてます。 それはむしろ入塾者を増やすために塾があおっているのではないかなーと…(違うかナ…)。なのでうちの子はもうすでに5年生だからムリだ…と最初から諦める必要はないと 思います。
ちなみに。首都圏の偏差値上位校に入られた方のお話です…。その子は自分の意思でインターに通っていました。自分の意思だったので日本語と英語は同レベルと 言えるほど英語はべらべらでした。もちろんインターでの成績もバツグンに評価されていました。また補習校にも通っていました。ただし 補習校の宿題は土曜日の夜に全部終えるようにしました。実質補習校の勉強は土曜日しか充てませんでした。 それ以外の日曜日から金曜日までは通信教育やドリルなどで勉強を重ね、日本の学校の勉強レベルは絶対落としませんでした。 日本の学校の勉強レベルが落ちるようならばインターを辞めさせて日本人学校に入学させる、と親から言われていたからです。 夏休みなど長期の休みはデュッセルドルフの夏季集中講習に通い勉強を続けました。5年生の途中で本帰国後、お受験で有名な塾に入ってさらに勉強を積み上げました…で、 ようやく希望校に帰国子女枠合格したのです。
どうですか。これが偏差値トップレベル校に入る子の努力です。偏差値の高い有名学校に子どもを入れたい…と 考えていらっしゃる保護者の方々、このレベルがキープできていますか?お受験を考えるのであればライバルはこんなレベルに位置するのだ、 ということを認識して、頑張ってください。「現地校(やインター)で頑張っているから、日本の学校の勉強は多少出来なくても仕方ない…」 もしそう考えていたとしたら貴方はすでに競争に負けているのです。
気をつけたい…帰国子女あるある!
高校編入時期は要注意!
高校の途中で帰国、日本の高校に編入を考えている人は要注意です。特に、公立・都立に入る人は、学年を落とす、もしくは入試からスタートというところがほとんどなので 編入は厳しいものと考えてください。私立も編入できるのは高2くらいまでが普通です。
中学卒業認定?!?!
上記につながりますが、公立・都立は日本の中学卒業認定がないと入試試験が受けられないところもあります(特に地方)。願書提出直前になって 「なんじゃ、そりゃ?」ということにならないように、志望校に問い合わせすることをお勧めします。
母子だけ居残りは可能?!
「だんな様の転勤、帰国が急に帰国が決まったけど、学校卒業まで母子だけ居残りたい…可能ですか?!」…けっこうあります。この問題。 私はエキスパートではないので確かなことは言えませんが、3~6か月以内なら可能、それ以上は無理、と考えています。なお、各インターナショナルスクール校および現地校、 日本人学校ともに滞在保証はしていません。