非常事態宣言の続くフランスで驚いたこと
France Lille 2017
2014年の夏以来、約3年ぶり?にフランスに行ってきました。この間にフランスでは同時多発テロをはじめ、何度もテロが起こり、現在も非常事態宣言が続いています。
日本に住む人であれば、何故そんなところに観光に行く?と思うかもしれませんが、ヨーロッパに住んでいる私とすれば、テロに遭う確率と日本で交通事故に 遭う確率はそれほど違わないでしょ?という感覚なので、テロが怖くてフランスに行かない、という選択肢はあまり考えられません。 それを言えば、交通事故に遭うのが怖いから外出しない、ってことですから。
ただ、今回、数々のことに驚きました。やはり非常事態宣言の国は普通とは違うのだ、ということを体験したので、そのことについて書きたいと思います。
今回の出かけた先は、フランス北部のリールという街。ユーロスターが停まる街で、ベルギーおよびイギリスの玄関口でもあります。 オランダからリールに行くには、…あんまり時間のない日本人はタリス(特急)もしくは車で行くと思うんですが、 わたしたちはのんびり急行を乗り継いでオランダからベルギー国内を通過してフランスに入りました。
最近はバスも出ており、それだと早く&安く行けるので、 人気があるようです。次回行くことがあれば、私たちもバスで行こうかな。
フランス国境を越えた後、最初の駅 TOURCOING
これがまずオドロキの一つだったのですが…ベルギーからインターシティでフランスに入った途端に、長い停車がありました。 何事ぞ?と思いきや、私服の入国管理職員がゾロゾロ…。たった3両しかない小さな電車にこれほどの人数を投入とは…!! オランダと何が違うのか?なんて考えたことなかったけど、なんだか壮絶すぎる、、、とピーンとアンテナが立つのが分かりました。
怪しい人なのか分かりませんが…何人かが長々と尋問にかけられており、わたしの車両では二人が荷物のチェックから服装チェックまで、、、 そのうち裸にされちゃうのでは?と思うくらいの執拗なチェックを受けていました。
国境越えの入国管理といえば、今までオランダからドイツに入ると、たまにチェックが来ましたが、こんなに入念なチェックは見たことなかったので、 ともかく驚きました(しかも、帰りのフランス→ベルギーは一切チェックがなかったところが…ベルギーらしいというか…苦笑)。
無事、リールに到着。リールといえば、今、新しい開発エリアがどんどんできて、めっちゃモダンな駅周辺エリアと旧市街があります。 モダンな駅前には日本を代表する芸術家、草間彌生さんのど派手なチューリップがリールの玄関口を飾っています。
昼間リール市内を歩く分にはそれほど違和感はないかもしれません。ただ、夜、駅の中を通過したときは、正直言ってビビりました。 何故夜駅になんか行くんだ!と言われればそれまでですけど、わたしたちの泊まっていた場所は駅の反対側にあったので、そこを通過しなければいけなかったのです。

何気なく駅に入ったら…。なんだこれは?!?!警官、私服警官、迷走服に機関銃を持った軍曹(?)…これらの人々がうじゃうじゃ…!! ともかくすごい数の人々が警備に当たっているので、これまたビックリしてしまいました。 これはハッキリ言っていい気分はしません。ロンドンのヒースロー以上で、ちょっとビビりました。
ともかく、フランスで夜駅に行くのは窃盗などの被害に遭う可能性もあるし、うじゃうじゃの警官にもビビるし、 行かないほうが賢明である、ということを悟りました。
しかし、冷静に考えてみて。国家を挙げてこれだけの人々が警備に当たっているのに、まだテロや未遂事件が起きるという現実。 いったいこの国はどうなってしまっているんだ?そう思わずにはいられませんでした。
以前、↑のような記事を書きました。旅行中、自分で書いたこの記事のことを考えていました。 リールの街も、ちょっと歩くとすぐにパリの20区や15区のような暗いイメージの集合住宅が連なっていました。 これらの地域は歩いても怖い地域ではありません。ただ、パリ北部にはもっとひどいバンリュー地域が存在するという現実。

この旅行中、リールから20分ほどのところにあるルーベ(roubaix)という街に行きました。ここにはアウトレットモールと有名なミュージアムがあるので、 そこに行ったのですが、はっきり言って街は…さびれていて、粗末で安っぽい雰囲気が漂っていました。 浮浪者がたくさんいて、商店街のほとんどが閉まっていて、かなり酷い。まー、有名なミュージアムは素晴らしく、 アウトレットモールでも子供が好きなものをタダならぬ安い値段でゲットできたので大喜びだったんですけどねえ。
いずれにしても、オランダでは、どこに行ってもああいう雰囲気はないなあ。前、イギリスのEU離脱時にも言いましたけど、 これはEUのせいでもなんでもない。フランスの問題なんです。今、調べてみると、この地域はフランスでもサイアクの失業率 (15%くらい)を抱える問題地域なのだそうで、そのせいもあってルペン支持者が多い地域なんだそうです。 あ~なるほど。イギリスとまったく同じ現象が起きているんですね。
最期に一番驚いたのが、世界遺産であるリールの鐘楼が閉まっていたこと!!!
いや、正確に言えば、閉まってはいなかったのです。ただ、扉が完全に閉まっていて、鐘楼に上りたい人は、 ベルを押して扉を開けてもらわなければいけなかったのです。
「閉まってるじゃん、どうするよ???」とうろたえていると、ちょうどフランス人の家族連れがやってきて、 彼らが「なんだ、なんだ、どうなってるんだ???」とドアをガンガン開けようと試みたあと(…)、ベルを押してフランス語で何か話をしました。 ハラハラ見ていると、しばらくのやりとりの後、ドアが開き、私たちもついでに入ることができました。
中に入ると、ひと家族ずつ、どこから来たんだ、年齢はいくつか…?などの尋問を受けた後、粛々と階段を上って途中で入場料を払い、 さらに塔のてっぺんまで登りました。階段途中や上にはかなりの観光客もいて、観光モードが漂っていたんですけどねえ。
それにしても。世界遺産の鐘楼も、テロのターゲットになっているんでしょうか。。。こんな厳重にしなければいけない理由を教えて…??? 確かに、下でドカンとやられたら吹っ飛びますけどねえ。
ちなみに扉は職員の鍵がないと開かないシステムで、これまた職員が先に逃げてしまったらor撃たれてしまったら、 わたしたちは中に閉じ込められっぱなしで逃げられないシステムでした。かなり恐ろしい…。こうなったときのことまで考えてくれてるのかな???
…とまあ。いろいろ驚いたことがありました。しかし、もちろんフランスならではのお楽しみもたくさんありました。最後にちょこっと写真集。
リールの旧市街。たくさんの魅力的なお店に美しい街並み。
フランスとベルギーの文化を併せ持つリール。料理はこの地域特別のベルギーちっく料理がたくさんあります。まさに美味しいとこ取り。 写真は駅前の人気ブラッセリー。フランス全土にあるチェーンのようですが、ちゃんとここの地方の名物が食べられます。
リール駅前の人気レストラン: Lille Les 3 Brasseurs
リールといえば、カフェ MEERT。1761年創業の老舗パティセリーです。サロン・ド・テとレストランを併設しており、 どちらもラグジュアリー感たっぷり。このラグジュアリー感をパリで味わおうと思ったら、ここの2倍の値段は出さなければならないのではないかと、、、。 パリに比べるとお得感たっぷりなのが(我が家には)うれしい。
ここで飲んだお茶は、オドロキの美味でした。ここまで美味しいのは、イギリスの高級アフタヌーンティー以外にあったか?てな味わい!! まー、オランダでは味わえんね。お薦めです!!
リール カフェ MEERT: Cafe Meert Lille
半分新しいノートルダム寺院。フランスに行くといつもここがカトリック国であることを思い出します。前も書いた気がしますが、 わたしはフランス系のカトリックの学校に行っていたので、ほんのりと昔味わった懐かしさが蘇ってきます。
フランスはオランダより厳しいカトリック国なので、その厳格さがイスラム教徒との衝突を激しくするのかもなあ。 その昔、ユグノー(プロテスタント・カルヴァン派)はフランス国内で弾圧され、激しい内戦が勃発し、その後、国外へ逃走した人も多かったわけですが、 考えてみるとその頃とあんまり体質は変わっていないのかもしれません。
今も、ブルカやブルキニは禁止などと言ってますけど、全面禁止にする必要はないと思うんですけどね。 中途半端な抑え込みは、ホームグロウンテロリストの誕生を助長するだけなのではないかなあ。 今後、大統領も決まりますが、誰になったとしても、この国の問題は深く解決はまだほど遠い…そう感じずにはいられなかった旅行でした。